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【性格に関する心理学】性格とはなんなのか?心理学を使ってわかりやすく解説

「あの人は性格が良い」「あの人は性格が悪い」「なんだか最近あの人変わったね」

わたしたちは普段から何気なくこの性格という言葉を使っていますが、そもそも性格とはなんでしょうか?

その人間の考え方でしょうか?習慣づけられた行動パターンのようなもののことでしょうか?

改めて考えてみるとハッキリと説明できる人は少ないのではないでしょうか?

今回はそんな性格について、心理学の観点から考えていきたいと思います。

 

性格は生まる前と後の両方で決まる

性格とはいったいなんでしょうか?古くから心理学では性格をキャラクター(性格)とパーソナリティー(人格)という1つの言葉で定義してきました。

キャラクターとは、その人が生まれた時から持っている資源、いわゆる遺伝的なものと解釈され、逆にパーソナリティーは生まれた後の育った環境の影響から培われたものとされています。

 

性格が先天的要素、後天的要素のどちらに色濃く影響を受けるのかについては、現代においてもまだ結論が出ていません。

 

一般的に、人の考え方や行動は後天的な環境での経験や学習で身に付けられるとされますが、一卵性双生児を観察したデータからは、違った環境で育った場合でも性格が似ているケースがよく見られることがわかっています。

となると、生まれながらのキャラクターに、成長していく間に身に付けたパーソナリティーが加わって性格ができていると解釈するのが妥当でしょう。性格は、キャラクターとパーソナリティーの相互関係によって形作られているようです。

 

性格と同じように使われる言葉に個性があります。

例えば、人の性格に暗い、明るいなどがあるのも個性ですし、服装や色などの好みも個性と言えます。

つまり個性とは、他の人と区別されたその人独自の特徴のこと。もともとという言葉には「分割できない」「他と置き換えられない」という意味があり、性格はもちろんのこと、その人の能力や外見についても広く使われています。

また、感情面の個性として、気質があります。

気質は性格の基盤となっており、遺伝の影響を大きく受けていると言われています。

 

 

兄弟の性格は親の接し方で変わる

兄弟の性格はどのようにして決まるのでしょうか。

同じ親から生まれ、同じ環境で育ったにもかかわらず、兄弟で性格はかなり違います。これは、それぞれの子供に対する親の接し方の違いが、兄弟の性格の違いを造るとされています。

 

例えば、長子(最初の子)に対しては、どうしても親は子育て熱心になりがちで、積極的に子供に関わろうとします。ところが2人目以降(中間子)になると、かなり余裕をもって子育てできるようになります。

また、親は長子には早い自立を促しますが、末っ子にはいつまでもかわいらしさを期待します。

 

長子にとってみれば、次子の誕生によって母親の愛情が半分奪われたように感じることで、それを乗り越え、耐える力がつくとされています。

一方、次子以降の子供は、自分より年長を相手に競争しなければならないので、要領を身に付け、親の注目を集める行動を意識してするようになります。

 

兄弟はその年齢差によっても関わり方が変わってきます。

年齢差が小さいと、お互い意識してライバル心が芽生え、喧嘩も多くなります。

年齢差が大きいと年上は余裕をもって対応できるようです。

 

このように、兄弟関係は人間関係を形成する基礎となり、社会性を発展させていく基盤となります。

しかし、最近は一人っ子が多くなり、親子という縦の人間関係しかできないために、競争や協力、妥協や忍耐といった人間関係の習熟ができない子供が増えているという見方もあります。

 

 

性格と知能は遺伝と環境、どちらの影響?

性格は、遺伝と環境のどちらにより影響を受けるのかを一卵性双生児、二卵性双生児を比べることで研究する方法を双生児法といいます。

 

一卵性双生児の兄弟は、同じ受精卵から生まれてくるため、遺伝子は100%同じです。

一方、二卵性双生児の兄弟は、別々の卵子から生まれてくるため、遺伝子は一般の兄弟と同じです。

ということは、もし一卵性双生児の兄弟の間の性格の差が二卵性双生児の兄弟のそれよりも小さければ、性格は遺伝によって影響を受けるということになります。

また、一卵性双生児と二卵性双生児の差があまりなければ、性格は環境によってより影響を受けるということになります。

 

一方、アメリカの心理学者アーサー・K・ジェンセン環境閾値(かんきょういきちせつ)を提唱しました。これは、ある人間が遺伝の影響を受けて才能を開花させるためには、それが現れるのに必要な環境が一定水準(閾値)与えられていることが前提であるという考え方です。

体系や知能などは遺伝の影響を受けやすいのですが、外国語を習得したり成績を伸ばしたりするためには環境が閾値を超えていなければならないというものです。

 

 

性格をある基準で分類すると、とらえやすい

性格の分類法には大きく分けて類型論特性論とがあります。類型論は性格をいくつかの基準によって類型に分ける方法で、特性論は人間の性格をいくつかの特性の集まりだと考えて分ける方法です。

 

代表的な類型論にはドイツの精神医学者エルンスト・クレッチマー(1888~1964)が提唱した体型別性格分類法があります。クレッチマーは人の体型と性格には一定の関係があると考え、体型を3つに分け、それぞれの特徴を以下のように説明しました。

肥満型(躁うつ気質)・・・社交的で明るく、楽しい性格だが、気分にバラつきがある。

やせ型(分裂気質)・・・神経質で控えめ。周囲と関わるよりは自分の世界で過ごすことを好む。また些細な他人からの言動に敏感に反応するが、他人には意外に鈍感である。

筋肉質系(粘着気質)・・・正義感が強く、頑固で自分の意見を押し通す。また気に入らないと急に怒り出すことがあるが、礼儀正しく、几帳面なところもある。

 

ギリシャ時代からあった類型論

類型論は、古くは古代ギリシャの医師ヒポクラテス(前460~前377)が唱えた四大体液説にまでさかのぼり、以後もさまざまな説が唱えられました。

四大体液説・・・古代ギリシャの医聖ヒポクラテスが提唱。人間の身体を血液、粘膜、黄胆汁、黒胆汁という4種類の血液別に分け、そのバランスがとれていれば健康を維持できるとした。

体液理論・・・古代ギリシャの医学者ガレノス(129ごろ~200ごろ)が提唱。人間の身体を多血質粘液質胆汁質憂うつ質(黒胆汁質)四大気質に分類した。

ユングの類型論・・・ユングは、人の基本態度から性格を外交性内向性に分けた。さらにそれぞれを思考型、感情型、感覚型、直感型に分けた。

 

 

人の性格は、テストによって分析することができる

人の性格は、生まれながらに持っている遺伝や気質を基盤として、後天的に受け入れる環境や様々な経験などを認知しつつ段階的に形成されていくものです。

そして、日常的には、性格はその人らしさを表す行動であり、特徴と解釈されます。

そこで、その人の性格や性格から現れる行動が、学習活動や企業など、さまざまなシーンにおいてふさわしいかどうか見極めるための判断基準、すなわち性格テストが必要とされるようになりました。

 

性格テストは検査方法によって違いがあり、大きく以下の3つに分けられます。

質問紙法・・・アンケートと似ており、質問事項に対して「はい」「いいえ」や、「どちらでもない」といった答えを出して性格を探る方法。

作業検査法・・・ある特定の検査場面を設定し、それによって作業した結果や経過から性格の特徴を判断するもの。

投影法・・・その人にある刺激を与え、その反応から深層心理を探り、性格を判断するもの。

 

バーナム効果

どんな人にも当てはまるような性格記述であっても、当人に向かって言うことで、その人が信じてしまうような心理的効果をいいます。

 

バーナム効果で引き合いに出されるのが血液型占いなどの占いです。現在の心理学では、血液型と性格との因果関係は実証されていません。にもかかわらず、大多数の人が血液型占いを信じているのは、あたかも自分の性格を言い当てられているように思いんでしまうためでしょう。

中には、そのうち血液型占いの結果に基づいた行動を取るようになる人もいますが、これは自己成就予言の1種と考えられます。

 

ちなみにバーナム効果の由来は、アメリカのサーカス興行師バーナムが行った心理操作から1956年に命名されました。

 

 

 

自分では気づかない自分に気づく「ジョハリの窓

自分自身の性格について、自分で思っているのとは全く異なる印象を他人が持っていることはよくあります。それを図で表したのが、アメリカの心理学者ジョセルフ・ルフトハリー・インガムが発表した「対人関係における気づきのグラフモデル」です。

後にこの2人の名前を組み合わせて、ジョハリの窓と呼ばれるようになりました。

 

これは、自己の領域を格子窓のようなものだととらえ、4つの窓(領域)に分けたものです。

つまり人間には、他人と自分の両方が知っている部分(解放領域)、自分は知らないが他人は知っている部分(盲点領域)、自分は知っているが他人は知らない部分(秘密領域)、どちらも知らない未知の部分(未知領域)の4つがあるとされています。

 

自分の性格に悩む人にとっては、自己開示力を高めることによって解放領域を広げたり、秘密領域を少なくしたりすることが大切です。

また、盲点領域を指摘してくれる他人の存在を大切にしたり、未知領域を通して可能性を広げることもできます。

悩んだときにはジョハリの窓を書いて心を整理してみると良いでしょう。

 

 

 

脳の働きには個人差があり、個々の性格に表れる

性格を形成するものの1つとして脳の機能が挙げられます。大脳辺縁系にある偏桃体(へんとうたい)や海馬は、人の性格を穏やかに保つ機能を果たしています。

偏桃体は食欲、性欲、感情などをコントロールする役割があり、ここが壊れると食欲、性行動、喜怒哀楽のコントロールが効かなくなるなどの異常が現れます。また、記憶がスムーズに行われるための器官である海馬が壊れると、記憶障害が発生します。

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脳機能に異常がないまでも、もともとその人が持っている脳の機能の違いによって性格に差が出てくることもわかっています。

アメリカの心理学者デボラ・ジョンソンは、内向的な人の脳と外交的な人の脳を調べ、内向的な人の脳は前頭葉視床下部の活性が高く、外交的な人は側頭葉や視床後部などの活性が高いことを発見しました。

また、シャイな人は普通の人よりも脳の偏桃体の活性が高いという実験結果が出ています。

 

つまり、人の脳には個人差があり、それが性格に表れているともいえるのです。

 

男脳、女脳

男の子と女の子の成長過程を見ると、一般的に女の子の方が言葉を話し始める時期が早いようです。

これは言葉を司どる機能のある左脳が、女の子の方が発達していると考えられます。

一方、男性は方向感覚に優れ、女性には方向音痴が多いとされています。これは空間認識を司る右脳が、女性よりも男性が優れているといわれる所以です。

 

右脳と左脳の情報交換の役割を果たす脳梁(のうりょう)は、女性が男性よりも大きく、そのため細かい心配りや感覚があるとされています。

男性は脳梁が小さいため、左右の脳の情報交換を臨機応変にしにくく、失敗などしてもンネルをすぐに切り替えることができません。

このように性差によって脳の機能に違いがあり、さらに個人差もあるのです。

【心の病10選をわかりやすく解説】

現代人は人類の歴史上最もストレスに晒されていると言われています。

学校や職場、家庭での人間関係、受験や出世争い、ネットやSNSでの誹謗中傷などあらゆるストレスが日常に潜んでいます。

そんな時代に暮らしている現代人は特に心の病にかかりやすくなっています。皆さんの周りにもうつ病になってしまったり、引きこもりになってしまっている方がいるのではないでしょうか?

そこで今回は、心に関する病を10こに分けてわかりやすく解説していきたいと思います。

1.適応障害

人は人生の節目節目で環境の変化を体験します。例えば社会人として会社に就職することもそうでしょうし、異動や転勤もそうです。適応障害とは、こうした環境の変化から発生するストレスによって心身に障害が現れ、社会生活に支障をきたす状態を言います。

症状としては、抑うつ気分や不安を伴い、身体症状としては摂食障害、けいれん、頭痛など、行動としては無断欠席や虚偽発言など、極端な変化が起こります。

 

新入社員や新大学生などに見られる五月病はその代表例といえます。

これまでとは全く違う環境に飛び込み、右も左もわからない中で働くことは心身共に非常にエネルギーを奪われます。また、社会人1年目は、「自分ができること」と「自分がやれること」の差を思い知らされる時期でもあります。そうした環境に適応するため防衛機制が働きますが、ストレスが限度を超えるとその機能が働かなくなります。

その結果、五月病という形で現れるのです。

 

適応障害精神疾患として軽度の部類に入りますが、うつ病をはじめとする病気の入り口となることがあり、軽く考えるのは危険です。

 

主人在宅ストレス症候群

定年になった夫が常に家にいるようになったことで、妻が強いストレスを感じ、身体に変調をきたす状態を、心療内科黒川信夫主人在宅ストレス症候群と名付けました。

中には夫が脱サラして自宅で仕事を始めたというケースもあると言います。

 

それらに共通しているのは、夫が家でテレビばかり見ている、3度の食事の用意が大変、細かく干渉されるなどで、今までにない強い束縛間を感じていることです。

 

こうした妻たちは、今まで亭主関白型だった夫に従ってきた女性が多く、夫に自分の気持ちを伝えられずに抑うつ気分となり、身体的にも胃腸がんや高血圧、過敏性腸症候群、脱力感などの症状が現れてくると言います。

これらも1つの適応障害と言えるでしょう。

 

 

2.燃え尽き症候群バーンアウト・シンドローム

なんの滞りもなく仕事をしてきた人が突然やる気を失い、まるで燃え尽きたかのようになってしまう。これが燃え尽き症候群バーンアウト・シンドロームです。

この言葉を最初に用いたのはアメリカの精神心理学者ハーバート・フロイデンバーガー(1927~1999)で、その後アメリカの社会心理学クリスティーナ・マスラックが、その重症度を判定するMBIマニュアルを考案しました。

 

MBIによると、バーンアウトは、情緒的消耗感脱人格化個人的達成感の低下の3つの症状があると定義されています。情緒的消耗感とは、仕事を通じて情緒的に力を出し尽くし、消耗してしまった状態です。

激務がたたって心にゆとりがなくなってしまったと感じたり、身も心も疲れ果ててしまったなどの感情です。

 

そうした消耗感への防衛機制として、相手との情緒的コミュニケーションをできるだけ避けるようになります。その行き着く先が脱人格化です。そのような人は他社に対して紋切り型で対応してしまうようになるため、相手への気配りなどを面倒に感じたり、仕事の結果などどうでもいいと感じるようになります。

 

そうなると仕事の成果は落ち込み、これまでその仕事で得てきた達成感は著しく低下してしまいます。個人的達成感の低下は、時に人を休職や離職に向かわせることもあります。

 

近年の日本では、燃え尽き症候群は、大きなスポーツ大会で選手たちが人生最大の目標を終え、虚脱感を覚えるときなど、深刻な精神状態とは別のケースで使うことが多くなっています。

 

 

3.PTSD心的外傷後ストレス障害

PTSD心的外傷後ストレス障害は、日本では1995年に起きた阪神淡路大震災以降に注目を浴びるようになり、アメリカでは1980年代、ベトナム戦争から帰還した兵士の症状として注目され始めました。PTSDとは不安障害の1種で犯罪や戦争、災害や事故、暴力や虐待など、死と隣り合わせの危険を体験したり、ショッキングな出来事に出会うと、それがトラウマ(心的外傷)となって発症するとされています。多くの場合すぐに発症しますが、時にはそうした体験の数年後に突然何かのきっかけで発症することもあります。

 

PTSDを発症すると、トラウマとなった出来事に関連することを回避しようとしたり、その出来事の重大な部分だけを思い出せなくなったりします。また、神経が高ぶって怒りっぽくなり、集中力がなくなる、過剰な警戒心、睡眠障害なども現れます。

 

PTSDの症状として特徴的なのがトラウマの再体験です。突然、目の前に思い出したくもないトラウマがよみがえるフラッシュバックや、その出来事に関連した悪夢を繰り返し見たりします。症状の辛さから、離婚や失職、対人不安やアルコール依存、薬物依存などで逃避したり、最悪のケースでは自殺に追い込まれることもあります。

 

PTSDは、極端な経験から感じるストレスが原因ですから、焦らず辛抱強く、その人のペースで治療を進めていくことが大切です。

治療法としては、同じトラウマを持つ人々が集まり話し合うグループセラピーや、行動療法催眠療法EMDR(脳をレム睡眠の状態に持っていき、トラウマを癒していく)などがあります。

 

 

解離性障害

解離とはバラバラになること。解離性障害は、トラウマへの自己防衛手段として解離という方法を選んだ状態をいいます。

つまり、自我を成立させている記憶、意識、運動、視覚、触覚などの感覚が損なわれ、正常に機能しなくなるのです。

 

解離性障害には、症状別に以下のようなものが挙げられます。

 

解離性健忘・・・数時間~数日間の記憶が失われる。空間移動しているような感覚。

解離性遁走(とんそう)・・・家庭や職場から突然失踪し、その間自分の名前や職業、家族のことなどを忘れる。

解離性同一障害(多重人格障害・・・複数の人格が存在する。

解離性混迷・・・長時間座ったり、横になったままで、音や光などの刺激にも反応しない。

憑依障害・・・霊や神などに取り憑かれていると確信する。

解離性運動障害・・・手足の運動能力が失われ、介助なしで立つことができなくなる。

解離性知覚麻痺・・・皮膚の感覚がなくなり、視覚、聴覚、嗅覚の障害も現れる。

 

 

4.アディクション嗜癖

ある特定の刺激や快楽を求めてしまう性向をアディクション嗜癖といいます。

わかりやすい言葉では「のめりこむ」「はまる」といった状態です。アディクションを大きく分けると、物質嗜癖(しへき)、プロセス嗜癖人間関係嗜癖の3つがあります。これらを自分自身でコントロールできなくなり、精神疾患として発症してしまうのが依存症です。

 

アルコール依存症は物質嗜癖(気分を変えてくれる物質へののめりこみ)から生まれる表的な依存症です。薬物依存や過食もこれに当てはまります。これらにのめりこむと、それが切れた時に手が震えるなどの禁断症状が起こります。

 

ギャンブル依存症はプロセス嗜癖(高揚感を与えてくれる行動へののめりこみ)から起こります。ひどくなると生活費まで使い込み、借金をしてまでやるようになります。仕事、ショッピング、借金、リストカット、インターネット、ストーキング、強迫的なダイエットなども嗜癖の対象です。

 

人間関係嗜癖は、人間関係にのめりこむもので、相手との関係性に過剰に依存する共依存などがこれにあたります。

 

アディクションが起こる背景には、自分が抱えている辛さから逃れ、自分で自分を癒そうとしていることが考えられます。

しかし、この自己治療は、次第にコントロールが利かなくなります。そして、1つのアディクションから次のアディクションへ移行したり、複数のアディクションを抱えてしまうこともあります。自己コントロールができない状態ですから、専門医や周囲の力を借りて治療する必要があります。

 

 

5.共依存

依存症の中でも人間関係嗜癖に類するのが共依存です。モノやある行動に依存するのではなく、特定の人間関係に依存し、身近な人(配偶者、親族、恋人、友人など)の問題ばかりに気を向けてその問題の後始末に夢中になります。

 

典型的な例が、ひどく暴力的な男性でも好きになってしまう女性です。

彼女はDV(ドメスティックバイオレンス)を受けても、お金をむしり取られても「あの人にもいいところはある」と決して別れようとはしません。それどころか「あの人には私がいないとだめだ」と自分を納得させて相手に尽くそうとします。そのようにふるまう原因は、相手との関係性を維持することに自分の生きる証を見出していることにあります。

 

このように、共依存の人は、周りの感情や行動に過剰なまでの責任を感じます。自分の欲求を表現することが苦手で、強い不安感を抱えています。常に他者の評価を必要として、それを持って「優れた自分」「愛される自分」という認識を自分の中に取り入れようとします。

 

時には甘えることも必要でしょうし、助け合って生きることは、幸せな人生を過ごすための必要条件でもあります。しかし、共依存しすぎると、健全な人間関係を築くにはかえってマイナスになってしまいます。

 

アディクション全般に言えることですが、まず治療のためには周囲性を断ち切ることが大切です。

刺激を受けることを阻害し、アディクションを進行させる回路を破壊するのです。望ましくない人間関係を断ち切るためには、共依存を自覚することが必要と言えるでしょう。

 

 

6.パーソナリティ障害

物事のとらえ方や行動が一風変わっており、そのために社会生活を送ることが難しくなってしまうのがパーソナリティ障害です。

例えば責任感がある人は、周りからも信頼されます。しかし、あまりにも責任感が強すぎても、逆に無責任でも周りは迷惑なものです。ドイツの精神病理学クルト・シュナイダー(1887~1967)は「性格の偏りにために、自分も苦しみ、なおかつ周りも苦しむ」と定義していますが、こうした偏りがパーソナリティ障害の特徴と言えるでしょう。

 

パーソナリティ障害は大きく

①ありえない考えにはまりやすいA群パーソナリティ障害

②感情の表し方が過剰すぎたり、周りを振り回したりするB群パーソナリティ障害

③人間関係に著しい不安を抱えるC群パーソナリティ障害

この3つに分けられます。

 

原因としてよく言われるのが親の影響です。乳児期に安定した愛着を形成することができなかった子供は、周りの世界や人に対しての恐怖感を心に刻みつけており、それが大きく影響するともいわれています。

また遺伝的な影響もあるとされています。

 

境界性パーソナリティー障害

気分の移り変わりが激しく、人に対する態度や行動が驚くほど急転するのが境界性パーソナリティー障害(ボーダーライン)です。思春期または成人期に生じることが多く、圧倒的に若い女性に多いのが特徴です。

その感情の変化は、時間単位、あるいは日単位で起こります。

 

見捨てられるのではないかという不安が強く、相手が少しでも不機嫌な表情や口調で話すと、もう自分は必要とされていないのだはないかと強い不安感を抱きます。

相手にとってみれば特に理由ない場合でも、彼らはそれを悪い意味で受け取ってしまうのです。そして相手の気持ちを振り向かせようとして機嫌を取ってみたり、逆に憤って衝動的に自己破壊行動を起こすこともあります。物事を「好きか嫌いか」「敵か味方か」と極端に考えがちなため、なかなか心の平安を得ることができず、愛情を求めながらも孤独感をますます深めていくのです。

 

この行動の背景には、幼児期における親子関係の不全や遺伝的問題、トラウマ経験などがあるとされ、またうつ病摂食障害などを併発しているケースが見られます。

 

自己愛性パーソナリティー障害

人間の幸せに自尊心は欠かせません。しかし、過剰なまでにそれが肥大しているとすれば問題です。自己愛性パーソナリティー障害は、ありのままの自分を愛せなくなり、自分に対する誇大感を持つようになる状態を言います。

彼らは自分には特別な才能があり、当然周囲の人は自分を認めて褒めたたえるべきだと考えます。

 

そのため、他人からの評価には敏感で、もし批判でもされようものなら強い怒りを表します。プライドの高さゆえ挫折や失敗を認めることができず、著しく心を傷つけられて、引きこもりになることさえあります。

そのくせ他人の気持ちや立場を理解しようとせず、他人は利用するものと考える傾向があります。当然、共感や思いやりにかけます。

 

発症の根底には自己愛の傷つきがあります。母親の過保護(溺愛)と愛情不足のアンバランスな経験や、幼いころは愛情を受けて育っても途中で養育者が亡くなる愛情剥奪経験を持つ人も多いようです。

 

ただ、芸術など創造的な営みに、こうした傲慢さ、尊大さ、妥協を許さない生き方は欠かせない要件とも言えます。

 

 

 

8.対人恐怖症

対人恐怖症(社会恐怖は、日常生活もままならないほどに、人と接するときに緊張し、震えたり、電話が取れなくなったりなどする病気です。この症状に悩む人は女性に多く、男性の約2倍もいると言われています。特に20~30代は、就職して社会に出て新しい環境に戸惑ったり、結婚・出産などで母親同士の人間関係に悩まされる時期でもあります。

そのため、今まで感じたことのない苦痛やトラブルに見舞われることになります。

 

対人恐怖の背景には、幼い頃の体験も影響していると言われています。

例えば、もともと神経質なところに、学校で先生に叱られた友人をみて人前に出るのが怖くなったり、発表会で失敗して笑われて、それ以来人前で話すことができなくなったなど、人それぞれの辛い体験があったと考えられます。

 

こうした症状は、以前は「気持ちの持ちようだ」などと言って相手にされない場合が多かったようですが、現在は社会不安障害(恐怖症)として、助力が必要とされています。

とはいえ、本人がなかなか助力を求めないことが多いのも事実です。

そのため、引きこもりにつながっていく可能性もあります。そこで、周囲がそのような状態を病気とづき、悩んでいる人が前向きに生きられるように治療に意識を向けさせ、手助けしてあげることが大切です。

 

治療方法には薬物治療認知行動療法がありますが、実際にはこの2つを併用する場合が多いようです。また、同時に他の精神疾患を併発する割合も高いので、なるべく早く受診したいものです。

 

対人恐怖症のタイプ

●赤面恐怖・・・人前に立つと顔が赤くなる。

●スピーチ恐怖・・・会議や披露宴などでスピーチする際、強いプレッシャーを感じる

●視線恐怖・・・人に観察されている気がするなど、他人の視線が怖くなる

●会食恐怖・・・食べているところを他人に見られると食べられなくなる

●電話恐怖・・・電話が鳴ると動悸が激しくなり、電話が取れなくなる

●書痙(しょけい)・・・人前で字を書こうとすると震える

 

 

9.パニック障害

パニック障害は、ある日突然、激しい不安とともにパニック発作(不安発作)が起こる病気です。激しい動機、息切れ、発汗、吐き気やめまいなどのパニック発作は30分(長くても1時間)程度で治まりますが、発作が起こっているときは、自分はこのまま頭がおかしくなってしまうのではないか、死んでしまうのではないか、などと強い恐怖に襲われて苦しみます。

 

パニック発作は、反復性があります。頻度は個人差があり、1日に何度も起きる人もいれば、1週間に1回程度の割合で起こる人もいます。

そして、発作を何度も経験しているうちに、またあの苦しみが襲ってくるのではないか、人前で発作が起きたらどうしようという予期不安に苦しめられます。

自分で症状をコントロールできないという恐怖がこの疾患の大きな特徴といえるでしょう。

 

また、広場恐怖(逃げられない場所にいるという恐怖)を伴う場合も多く、エレベーターや電車、タクシーの中など容易に逃げ出すことができない場所で、突然パニック発作に襲われます。そのため外の出るのを嫌がるようになり、行動範囲や生活範囲が狭められて、うつ状態になってしまうのです。

 

パニック障害は近年増加傾向にあり、中でも女性に多い病気と言われています。

原因としては、パニック障害を発症しやすい体質(親が患者の場合、発症率が高まる)、ストレスや過労が発作の誘因となる、中枢・末梢神経の調節障害が関与している、幼い頃に親と死別または生別したなどの環境要因などが挙げられています。

 

 

10.摂食障害

思春期や青年期の女性に多く見られるのが摂食障害で、文字通り摂食することに問題が出る病気です。症状によって、神経性大食症(過食症神経症無食欲症(拒食症)に分けられます。

 

過食症は食べることをやめられなくなり、1度に大量のものを食べる行為を繰り返します。しかし、そんな自分に対する自責の念もあり、肥満になることに恐怖を覚え、絶食したり、嘔吐をしたり、下痢や浣腸を使うなどして太るのを避けようとします。こうした行動が度重なると、食道炎や歯の損傷、低カリウム血症などを起こす危険性があります。

 

拒食症は、自分は太っているという思い込みが強く、痩せていても減量を続けてしまいます。そして、無月経、低体温などになり、最悪の場合、餓死に至る危険性もあります。

 

いずれもダイエットがきっかけになって発症することが多く、性的に成熟することへの葛藤や拒否感から起こることもあります。

また、性格的には真面目で完璧主義傾向が強い女性がかかりやすく、環境面では、人間関係の問題による心理的ストレスが考えられます。

特に母親との関係が問題とされます。母親の言うことを聞いて忠実に育ったため、成長してそれに耐え切れなくなり、ダイエットをきっかけとして摂食障害となるケースや、逆に愛情に恵まれずに育った場合、その反動が自分の肉体を極度にコントロールしたい願望になったというケースもあります。

 

治療方法としては、行動療法認知療法精神分析心理療法家族療法などがありますが、何を治療目的にするか、そして摂食障害をどんな観点からとらえるかによって治療法は変わってきます。

 

 

 

【心理学の種類7選】心理学の種類7選をわかりやすく解説

有史以来、人間の心は言語、歴史、文化、技術など、あらゆるものを創り出してきました。心理学はそうして生み出されたすべてのものと心の関係を考える学問です。

現代の心理学は、様々な学問と連携して、新たな心理法則を世に送り出しています。

 

心理学は大きく、基礎心理学応用心理学に分けられます。心理学の根幹となる現象を研究するのが基礎心理学です。

そして、そこで得た法則をさまざまな学問に活用するのが応用心理学です。

 

最近では、特に応用心理学の専門家・細分化が進み、文系・理系を問わず心理学との連携が始まっています。そうして生まれた新たな心理学研究を基礎に、学校カウンセリングや身障者福祉、老人問題、青少年問題、マーケティング、商品開発、災害時の心のケアに至るまでさまざまな領域で、心理学の知識が活用されています。

 

科学技術の進化や社会情勢が変化するたびに、わたしたちの心はそれらの変化といかに付き合うべきかという問題にさらされます。そしてそのたびに、心理学の研究領域も広がっています。

 

この記事ではそんな心理学の種類を7つにわけて紹介していきたいと思います。

1.心のトラブルの治療に取り組む臨床心理学

心はいつも元気なわけではありません。時にバランスを崩したり、大きな傷を負ってしまうこともあります。そんなとき、症状の改善に向けて取り組むのが臨床心理学の目的です。

 

臨床心理学は、アメリカの心理学者ライトナー・ウィトマー(1867~1956)がペンシルバニア大学において心理クリニックを開設したときに誕生したといわれています。

 

臨床心理学は、摂食障害心身症非行不登校引きこもり虐待暴力うつヒステリー統合失調症依存症など、心にまつわるトラブル全般の解決に取り組みます。

患者がそれらの問題を解決するを手助けするのが心の専門家、臨床心理士です。この資格を取るには大学院で臨床心理学を習得することが必要で、最近の心理学人気により、受験者は増えています。

 

ところで、心のトラブルの治療と言っても、臨床心理学者は薬物を投与することはできません。そのためクライエント(患者)をしっかり観察し、症状や疾患を分析し、その人に合った心理療法を施します。

 

そこで大事なのがクライエントを詳しく知ること。心理検査や面接では家庭の環境や生まれ育った環境など、調べられる限りの情報を集め、クライエントの人格像がありありと浮かぶようにする事例研究法を採用し、その結果に基づいて治療にあたります。

わが国では従来、個人療法が採用されていましたが、近年ではクライエントの周囲とも話合って、その悩みを取り去る努力をするなど、さまざまな方法が採られています。

 

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2.凶悪犯罪と社会の病理を解明する犯罪心理学

犯罪と人間の心理を研究する学問が犯罪心理学です。その目的を大きく分けるなら、

①なぜ人間は違法行為をしてしまうのか解き明かす

②犯罪の成否を決める目撃発言の信憑性を読み解く

③罪を償い終えた人の社会復帰をスムーズにするにはどうすれば良いのかを考える

主にこの3点が挙げられます。

 

犯罪心理学では、主に犯罪者への面接調査によって研究を行います。

なぜその人が犯罪を犯すに至ったのか、その生い立ちはどのようなものであったのか、犯罪者にとってその行動にはどのような意味があったのかなどをじっくりと聞き取り、心理学の知識を駆使してその意味を考えるのです。

 

例えば凶悪な犯罪者や意味不明の無差別殺人が起こったとき、わたしたちは「犯人は異常な心理の持ち主ではないか」と考えます。しかし犯罪心理学では、犯罪者とそうでない人の間には明確な違いはないと考えます。

だからこそ「なぜ人は罪を犯してしまうのか」という犯罪心理学の研究は大切なのです。

 

実際の犯罪調査にも、心理学は活用されています。

例えば人質救出作戦において、犯人との交渉を担当する交渉人(ネゴシエーターという専門職があります。犯人の精神状態や現場の状況などの情報を収集し、心理学、行動学犯罪学の知識と話術を用いて、事件を平和的に解決しようとします。

 

また、プロファイリングは、犯罪調査において行動科学的に分析し、犯人の特徴を推論することをいいます。

犯罪現場に残されたさまざまなデータから、犯人の特徴を推測して捜査を進めていく手法で、プロファイリングには、犯罪心理学の知識だけではなく、人類学なども含めた行動科学が活用されます。

 

もともとはFBIで開発されたプロファイリングですが、現在ではリバプール方式と呼ばれるプロファイリングが主流になっています。

犯人の行動を分類し、そのデータを基にして犯人像を創り上げていくFBI方式に対して、リバプール方式では統計が駆使されます。これらは総称して犯罪者プロファイリングと呼ばれます。

 

また、犯人の隠れ家を特定したり、次に犯人が凶行に及びそうな場所を特定したりするのは地理プロファイリングの仕事です。

 

 

3.マインドコントロールや洗脳を解明する社会心理学

社会心理学は、人間の行動を他社からの刺激や反応の結果と考えます。

マインドコントロールや洗脳に関する研究は、まさに社会心理学が得意とするテーマといえるでしょう。そのほか、流行はどのようにして生まれるのか、集団はどのようにしてできていくのか、困っている人を助ける人とそうでない人がいるのはなぜなのかなど、社会レベルから個人レベルまでの人間の行動を研究するのが社会心理学です。

 

マインドコントロールは、人を動かす方法の中で、最も巧妙かつ悪質な方法の1つです。

例えば、オウム真理教のような破壊的カルト(信者の人格や人生観、価値観、社会性を破壊する宗教)は、巧みにマインドコントロールを行い、本人の自覚がないままに自己のアイデンティティを破壊し、彼らが必要とする人格に変えてしまいます。つまり、人間の欲求を操り、情報をコントロールすることなどで個人を支配するのです。

そのため、破壊的カルトにマインドコントロールを受けた人は、時に常識では考えられないような犯罪行為に走ります。悪質商法に引っかかって、知らないうちに大金を奪われたというのもマインドコントロールの1つといえます。

 

良く誤解されるのが洗脳との違いです。洗脳は朝鮮戦争の時代にアメリカ人捕虜が受けた尋問と教化を、アメリカのジャーナリストエドワード・ハンターが使ったのが言葉の始まりとされています。

その方法は、物理的強制力をもって、人間の身体を拘束状態に置き、行動を変えようとします。社会心理学は、こうした心理のメカニズムをも研究のテーマとしています。

 

洗脳への3つのステップ

アメリカの心理学者エドガー・シャイン(1928~)は洗脳が行われる過程を3段階に分類しました。

解凍・・・長時間の尋問や、独房での監禁、睡眠不足状態をつくり、これまでその人が持っていた価値観やアイデンティティを崩壊させる。

変革・・・攻撃によりアイデンティティを破壊され、よるべのなくなった心は落ち着き先を求めて新たな価値観を受け入れようとする。解凍された段階になったときに、新たな価値観を脳に刻み込ませる。

再解凍・・・②の変革で新しい価値観を受け入れた人は、その価値観を昔の価値観と連結させようとする。そこで周りの人間から新しい価値観を支持するよう威圧的説得をされることで、その価値観が強く刻み込まれ、洗脳が完成する。

 

マインドコントロールの4つの方法

悪質なマインドコントロールは、以下のようなテクニックで批判する力や判断力を失わせ、行動に関する自由意思をなくしていく。

行動のコントロール・・・細かい行動の指示をする。付き合う相手、睡眠時間まで指示することも。しかし、本人は良心に従って自発的に行動していると感じている。

思想のコントロール・・・その教えに疑問を挟み込む余地もないほどに、徹底して教え込む。

感情のコントロール・・・良心的な組織は人に平安を与えるが、破壊的カルトなどは恐怖と不安の感情を中心にコントロールする。

情報のコントロール・・・組織に対する批判的な情報を禁止する。マスコミの第三者的な文書を禁じることもある。

 

 

 

4.赤ちゃんから高齢者まで幅広く研究する発達心理学

人の心と身体は、ゆっくりと時間をかけて発達していきます。この発達過程のメカニズムを研究するのが発達心理学です。

 

発達を促すのは遺伝か、経験か。赤ちゃんはなぜ人見知りをするのか。子供にはなぜ反抗期があるのか。中年期を迎えて第2の人生に飛び出そうとする人が多いのはなぜなのか。その研究テーマが前年代にわたるため、発達心理学は、心理学の中でも大きな位置を占めています。

 

発達心理学は、ついひと昔前まで児童期と青年期を主な研究対象としてきました。そもそもアメリカの心理学者スタンレー・ホール(1844~1924)の手によって児童心理学を中心に打ち立てられたためです。しかし高齢社会の深まりとともにそれは見直され、今では生まれてから死ぬまでを1つの枠組み(生涯発達)として研究することが一般的になっています。

 

「成長の謎」を解き明かす学問。それが発達心理学といえるでしょう。

代表的な理論としては、スイスの心理学者ジャン・ピアジェによる認知発達や、アメリカの心理学者エリク・エリクソン(1902~1994)による心理社会発達段階があります。

 

エリクソンは人生を8つの発達段階に分け、それぞれの段階に発達課題と心理的危機があるとしました。

乳児期 基本的信頼感の獲得・・・母親と信頼関係を形成する。

幼児期前期 自律性の獲得・・・排泄を学び、自律性を身につける。

幼児期後期 自主性の獲得・・・欲求と周りの規律に折り合いをつける。

学童期 勤勉性の獲得・・・勉強により能力を実感できるようになる。

青年期 アイデンティティ確立・・・自分らしさを打ち立てる。

成人期初期 親密性の獲得・・・異性を愛する。

成人期 生殖性の獲得・・・生殖活動に関心を持つ。

老年期 統合性の獲得(自我統合)・・・老いや死を受け入れ、余生を送る。

 

 

5.コンピュータとともに生まれた認知心理学

人はどのように物事を受け入れるのか、記憶をどのように思い出すのか、問題が目の前で起こったとき、どのように解決するのか。それらの仕組みを明らかにするのが認知心理学です。

 

「見る、聞く、話す、記憶する」といった認知の仕組みは、外部から客観的に観察できるものではありません。そこで認知心理学では、こころを情報処理システムととらえることで、その仕組みを明らかにしようとしました。

 

コンピュータは、①情報を入力、②ハードディスクに記憶、③必要な時に検索してファイルやプログラムを開く、という3つの過程によって情報を処理しています。ここから、情報を処理し、活用するためには入力保存検索、という3段階が必要だと結論づけました。

 

認知心理学の誕生はコンピュータの誕生と同時期にあたります。

心理学はそのときどきの学問に大きな影響を受けて発展を遂げますが、認知心理学はコンピュータと情報理論が生み出した20世紀生まれの新しい学問といえます。

 

また、脳科学情報科学言語学人類学神経科などさまざまな学問と連携し合うことで認知科学という新しい学問まで生み出しており、現在、学問の中においても重要な位置を占めている心理学です。

 

ちなみに、認知科学とは、情報処理の観点から人の知的活動を理解しようとする研究分野で、人工知能などが議論されています。心理学、人工知能学、文化人類学などの学問との連携も必要とされています。

 

 

 

6.アスリートの悩みを解決するスポーツ心理学

どうすれば運動能力は向上するのか、スポーツは性格にどのような影響を与えるのか、なぜ人はスポーツ観戦に興じるのかなどをテーマとするのがスポーツ心理学です。

あらゆる角度から、スポーツをする人、スポーツを見る人、スポーツを仕事にする人の心理を研究しています。わが国では、1964年の東京オリンピック開催にあたってスポーツ心理学が選手強化対策の一環として取り入れられ、後の発展に貢献することとなりました。

 

スポーツ心理学の中心的テーマともいえるのが、メンタルトレーニンです。

練習ではいい記録が出せるのに、本番になると本来の実力が発揮できない。そんな状況を改善するために、競技力を高める心理的スキルを強化することで、競技者の潜在能力を最大限に発揮させることを目指します。

 

そのために、ストレスや緊張のコントロール、集中力の強化、イメージトレーニング、やる気や目標達成力の向上、チームプレーなどに伴うコミュニケーションスキルの強化などを実践的に行います。

 

また、スポーツカウンセリングという方法が採られることもあります。

選手が抱えている問題を直接指導して解決するのではなく、面接によって選手が抱えている問題の背景を探り出し、その背景も含めて選手に気づかせて問題を解決する方法です。

 

このように、認知行動療法的なアプローチと、臨床的なアプローチからスポーツ選手をサポートするのがスポーツ心理学といえるでしょう。

 

ピークパフォーマンス

スポーツのみならず、その人にとって今までにない好成績を収めることをいいます。

アメリカの心理学者チャールズ・ガーフィールドは、ピークパフォーマンスを構成するものとして①精神的リラックス、②身体的リラックス、③繭(まゆ)の中にいる感覚、④自信がある楽観的感覚、⑤高度に力を放出する感覚、⑥コントロールしている感覚、⑦異常なほど「分かっている」という感覚、⑧現在に集中している感覚、があるといいます。

 

ピークパフォーマンスを求め続ければ、運動することが苦でなくなり、その結果、心身が健やかになるため、競技以外の効用も重要視されています。

 

 

 

7.社員のやる気を高める産業・組織心理学

事業を運営する上での諸問題について、心理学的手法を用いて解決を図り、業務の効率アップを研究するのが産業・組織心理学です。

その研究テーマはリーダーシップ、的確な意思決定、人材採用、人事評価、働く人の健康、宣伝・広告効果など多岐にわたります。

 

景気低迷の中、企業が業績を上げるためには、会社を支える従業員のモチベーションが欠かせません。

このモチベーションアップをどのように行うのかということも、産業・組織心理学の大きな研究テーマです。

 

モチベーションとは、動機付けです。動機が行動を起こすための動因であるのに対し、動機付けは行動を継続的に続けさせることを言います。

動機付けとしては、外的動機付け(ボーナスを奮発するなど)、内的動機付け(新規事業を任せて刺激を与えるなど)が考えられます。

また、実現可能な目標を設定し、成功体験を積み重ねることも効果的な動機付けとなるでしょう。

こうした動機付けから、仕事に張りを与え、社員に「明日も頑張ろう」という気持ちにさせることになるのです。

 

業績を上げるという意味で言うなら、働く人だけでなく消費者の行動を知ることも大切です。そのため産業・組織心理学では、購買意思決定の心理購買行動もテーマとしています。

 

どんなに効率よく綿密な計画を立てても、それを行動に移すのは結局のところ人間です。

また、企業や組織の人々の働き方や働く意思は、時代のうねりの中で変化しています。

だからこそ、産業・組織心理学は人間に焦点を当て、研究されるのです。

 

サラリーマン・アバシー

一流企業などに入社した新入社員が、ゴールデンウイーク明けごろから仕事に対して意欲をなくし、無気力になることを言います。

似たような症状に、大学新入生がかかるスチューデント・アバシーがあります。

 

アバシーとは、精神疾患などで起こる無気力な状態のことです。

理想の会社生活や学生生活を思い描いていたのに、現実には期待通りの成果を上げられない場合に、つらい現実から逃げたいと思う心が起こす自己防衛反応の1種といわれています。

 

 

まとめ

いかがでしたか?

心理学の種類について7つ紹介してきました。

この記事を参考にしてこれからの勉強や日々の生活に役立てていただけたら幸いです。

【集団心理学】集団に関する心理学3選をわかりやすく解説

 

人間が1人で出来ることには限界があります。そのため人間は昔から徒党を組んで集団で生活してきました。

しかし集団には頼りになる反面、恐ろしい側面も多くあるのです。

今回はそんな集団に関する心理学を3つ紹介していきます。この記事を読むことで集団の中で生活していく上での注意点を明確に理解することができます。

 

1.集団心理が持つ怖さ

「赤信号、皆で渡れば怖くない」という言葉がありますが、集団になると陥ってしまう心理行動に集団思考というものがあります。

人は集団の中に入ると、責任感や判断力が低下してしまうのです。

1-1・不敗幻想

集団思考の研究で有名なアメリカの心理学者ジャニス(1918~1990)は、集団思考において1番大きく働く力を不敗幻想と呼びました。

自分が所属している集団こそ力があり、個々人もそのために必死で働いている。だから私たちの集団はどんなことでもできるという幻想です。

 

不敗幻想がその集団を支配すると、集団の結束を乱すような反対意見は言えなくなります。常に全員一致が原則になりますから、新たな問題が発生したときの対応は遅れ、良い方法があっても、有効な方法は採られにくくなります。

 

最悪の場合、群衆による集団リンチや暴行事件まで引き起こします。

 

 

1-2.普遍感

集団リンチや暴行は日頃の欲求不満が原因です。欲求不満が積み重なり、はけ口を求めて一気に恐ろしい行動に向かうのです。

yamazo0224.hatenablog.com

 

特に、他人同士で構成された集団であれば責任感も薄れます。

誰もが同じことをしているのだから、悪いことではないと思ってしまうのです。

これを普遍感といい、人間にはもともと多数の人の価値観に倣(なら)っておけば間違いないと思う心理が働くようです。集団で赤信号を渡る行為などはまさにそれに当たります。

 

集団思考には多くの問題点があることを理解したうえで、自由に意見を言い合える雰囲気を作っていくことが大切です。

 

 

2.マイノリティ・インフルエンス(1人の意見が多数派を変える)

集団の意見は確かに物事に大きな影響を与えますが、時には少数の意見が集団に影響することもあります。

それがフランスの心理学者セルジュ・モスコビッチ(1925~2014)が実証したマイノリティ・インフルエンス(少数者の影響)です。

2-1.ホランダーの方略

マイノリティ・インフルエンスには2つの方法があります。

1つはホランダーの方略と呼ばれるものです。

 

過去に集団に大きく貢献した人が、その功績から集団の理解と承認を得ていく方法です。いわば上から変革を促す方法と言えるでしょう。

 

例えば、新しいプロジェクトを立ち上げる時、誰もがリーダーだと認める人物が、困難な案件でも、皆で協力していけば必ずうまくいくと前向きにさせる場面などがそれに当たります。

 

 

2-2.モスコビッチの方略

逆に下から変革を促すのがモスコビッチの方略です。

実績のない者が、自分の意見をかたくなに繰り返し主張することで、多数派の意見を切り崩していきます。

 

何度ボツにされようが、「これは絶対に消費者に受ける」と一貫して同じ企画を出し続け、ついには多数派を納得させるというケースです。

この場合、多数派に「もしかして自分たちが間違っているのではないか」という疑念が生まれ、再検討が促されるのです。

 

そして、多数派が少数派の行動や意見に納得したとき、マイノリティ・インフルエンスは最も効果を発揮し、少数派であっても後に非常に大きな支持を得ることになります。

 

ただし、あまりにもその意見と現実とのズレが大きい時には、マイノリティ・インフルエンスはあまり作用しないことが分かっています。

 

 

 

3.集団パニック、暴行を起こす集団心理

人は不安や恐怖(ストレス)などから混乱した心理状態に陥り、パニック、つまり集合的逃走を起こすことがあります。

特に日常とは違う状態になったとき、素早く正しい情報が伝達されないと、その危険性が増してきます。

 

 

3-1.集団ヒステリー

集団妄想ともいう群集心理です。

 

ある集団に属する人がヒステリー症状を起こすことで、それが集団に感染することをいいます。

 

例えば、同じクラスの生徒や宗教団体の信者間などで、1人が興奮することで他のメンバーも失神状態などを引き起こすことがあります。

 

催眠にかかりやすい状態のことを被暗示性と言いますが、この被暗示性が極端に高くなった状態のときに集団ヒステリーは起こります。

 

 

 

3-2.アジテーター(集団パニックを引き起こす扇動者)

パニックは拡大すると暴動へと発展します。引き金さえあればパニックはすぐに暴動に発展します。

 

暴動は不満の蓄積からも起こります。はじめは個人的なものであった不平・不満が周りに感染・拡大し、どんどん増幅していきます。

同時に抑制する力が低下し、逆に攻撃性が増し、遂には反社会的行動へと移っていくのです。

 

この引き金を引く人をアジテーター(扇動者)といいます。

アジテーターになる人は、もともと攻撃的で、社会に大きな不満を持っている人が多いとされています。

 

 

 

3-3.ラジオドラマが1200万人をパニックに陥れた

1938年、アメリカで「宇宙戦争」というラジオドラマがパニックを引き起こしたことがあります。

当日は火星人が宇宙から攻めてくるという内容で、ドラマは臨時ニュースで始まり、その臨場感あふれる演出に1200万人ともいわれた視聴者が現実と信じ込んで、パニック状態になったそうです。

 

このようにパニックとは、自分の目の前でのっぴきならないことが起こり、しかもそれが直接的に自分の生命や財産といった、他には代えがたい物を奪うかもしれないと感じた時に起こります。

 

しかし現代では、テレビやラジオ、インターネットが発達し、災害や大きなトラブルが起きた場合などには正確な情報が迅速に伝えられるシステムが整っています。

そのためパニックが起こる可能性は低くなっています。

 

 

おまけ  

身近にあるパニックの例

1.金融をめぐるパニック

大国がインフレなどを引き起こすことで、世界中に金融不安が広がり、経済が停滞してしまう。

不特定多数の人が銀行預金の引き出しに殺到するなど。

2.食品をめぐるぱパニック

国内外の食品偽装、食品汚染がクローズアップし、消費者の食に対する恐怖や不安が広がる中、国内生産価格が過度に高騰するなど。

3.少年犯罪をめぐるパニック

近年、少年犯罪の多発を背景に、世論が白熱し、少年法が改定され、厳罰化の方向に進んでいます。

しかし統計上では、年々少年犯罪件数は減少しているといいます。

4.禁煙をめぐるパニック

タバコは身体にとって悪いという人が大多数を占める現代では、愛煙家に対する偏見が広まり、タバコ産業への規制が過度に強まっています。

 

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

集団に関する心理学を3つ紹介してきました。

集団というのは心強いものですが、少しのきっかけで恐ろしいものへと変わってしまうということが分かっていただけたと思います。

これらのことを理解し、皆さんの集団の中での行動や生活に役立てていただければ幸いです。

 

 

 

 

 

【交渉・説得の心理学】交渉事に関する心理テクニック5選をわかりやすく解説

交渉・説得というのは、人間関係において必ずと言っていいほど行われるものです。

ビジネスや買い物など人生のあらゆる場面において重要な役割を担っています。

つまりこのスキルを高めれば、人生のあらゆる場面で自分の望み通りの結果が得られるということです。

この記事ではそんな交渉や説得に関する5つの心理テクニックをわかりやすく解説していきます。どうか最後まで読んでいただいて、あなたの交渉力を高めてください!

 

1.一面提示と両面提示

人を説得するにはテクニックが必要です。人を説得するまでのプロセスや働きを、説得的コミュニケーションといいます。

説得的コミュニケーションには一面提示両面提示の2つの方法があります。

 

一面提示は勧めるものの長所(プラスの面)だけを相手に知らせる方法です。そして両面提示は、いいところと悪いところの両方を相手に知らせる方法です。

 

例えば新発売されたゲームソフトがあるとします。その場合、一面提示ならばそのソフトのいい面ばかりを売り込みます。そして両面提示の場合は、確かに仕上がりは素晴らしいが、非常に高価であり、もうしばらく待てば、少し安い価格でいろいろな種類が市販される予定であるなどを伝えます。

 

一面提示ならばいいところだけしか伝えないため、後でクレームをつけられる可能性が出てきます。また、思いもよらない形で相手が意見を変えるブーメラン効果に見舞われることもあります。

 

もちろん相手がゲームマニアで、値段などにはこだわらないなら一面提示で十分でしょう。しかしそうでない場合は、両面提示でマイナス面も伝え、売る側の誠意を示す方が後々のことを考えれば良いと考えられます。

 

結論を先に言うか、後に言うかも重要なポイントです。

こちらの意見に肯定的で説得しやすい相手の場合は、結論を後に話す方が良いでしょう。

逆にこちらの意見に否定的で説得しにくい相手の場合は、先に結論を言ってからその理由を話す方が相手も納得しやすくなります。いずれにしても相手の立場に立って考えることを忘れてはなりません。

 

 

2.クライマックス法

心理学における説得の方法で、まず当たり障りのない話を、後から重要な話をする方法。

逆に、最初に重要な話を、後から当たり障りのない話をするのがアンチ・クライマックス法です。

聞き手の関心が高い時にはクライマックス法を、そうでないときにはアンチ・クライマックス法をと使い分けましょう。

 

 

3.フット・イン・ザ・ドア・テクニック

段階的要請法とも言います。相手の承諾を得たいとき、まずは必ず承諾してもらえるような小さな要請をすることで、後からする大きな要請が受け入れられる可能性を高めることを言います。

この場合、相手は小さな要請を承諾するため、2番目の大きな要請を断りにくくなるという心理が働きます。

 

逆に、最初に大きな要請をし、断られた後で本題となる小さな要請をすることをドア・イン・ザ・フェイス・テクニック(譲渡的要請法)と言います。

この場合、相手は最初の大きな要請を断るので、次に提示される小さな要請に関しては譲渡しようという心理が働きます。

 

 

4.スティンザー効果

アメリカの心理学者スティンザーは、小集団の生態を研究し、以下の3つの効果を発見しました。

1つ目は、以前口論した相手は次の会議でも口論相手の正面に座りたがること。

2つ目は、ある発言の次になされる発言は、多くの場合は反対意見であること。

3つ目は、リーダーの力が弱いときは、正面同士で私語がなされ、強いときは隣同士でなされること。これらをまとめてスティンザー効果(スティンザーの3原則)と言います。

 

このスティンザー効果は国会でも応用されているのだそうです。

会議のテーブルの形にも意味があって、全体で意見を出し合うときは丸テーブルがよいとされています。

これは、丸テーブルの場合、長方形のテーブルのように角がないので、位置によって力関係が発生することがなく、自由に発言しやすいためと言われています。

 

 

5.ランチョンテクニック

人間の脳は、気持ちいい体験をしたときのことはよく覚えているといいます。

心理学者グレゴリー・ラズランは、飲食をしながら相手と交渉すると、おいしい食事や楽しい時間がポジティブに話に結びつくとしました。

 

この気持ちよさを利用したのがランチョンテクニックです。ランチョンとは英語で「ちょっと気取ったランチ」という意味です。

 

例えばお昼を一緒にとりながらする打ち合わせには、ランチョンテクニックが作用し、「おいしい」という記憶と「打ち合わせ」という記憶が合わさって、「気持ちのいい打ち合わせ」という記憶として残る「連合の原理」が働くため、良い印象が残ります。

政治の世界では昔からよく使われてきた手法です。

 

もちろん昼食に限ったものではありませんが、夜の会食は改まった印象を与えますし、一般的に金額も高くなります。その点で昼食時の方が気軽に打ち合わせできます。

 

なお、このテクニックはビジネスに限定しません。

出会って間もない相手との距離を縮めたいときにも有効です。

 

 

まとめ

いかがでしたか?
交渉や説得に関する心理テクニックを5つ紹介してきました。

これらを理解し、実践して習得することで、みなさんの人間活動における様々な場面での交渉事で役立てていただければ幸いです。

 

【欲求に関する心理学】欲求不満とストレスに関する心理学を詳しく解説

「欲求が満たされなくて悶々とする」「日常的にストレスを感じる」「自分は欲深い人間なのだろうか?」この様な悩みを抱えている人は多いと思います。わたしも以前はそうでした。

しかし、人間の欲求欲求不満によるストレスについて理解することで冷静に自分を分析できるようになり、とても気持ちが楽になってストレスを和らげることができます。

この記事では心理学に関する書籍を100冊以上読んできた私が、欲求不満とそれによって生じるストレスについて詳しく解説していきたいと思います。

 

 

1.欲求不満が人間を成長させてくれる

人間の欲求には限りがなく、どんなに裕福な暮らしをしていてもそれに満足できず、また次の欲求が起こってきます。

しかし欲求不満が生じることは悪いことではありません。それは人間を成長させる大きな原動力になっているのです。

 

1-1.実存的欲求不満

これはオーストラリアの心理学者ヴィクトール・フランクル(1905~1997)が発見したものです。

フランクルは、第二次世界大戦時に強制収容所で過ごした経験から、生きる意味を見出すことができないような欲求不満があることを見出し、これを実存的欲求不満と名付けました。

 

実存的欲求不満になると生きる気力をなくしてしまいます。毎日を何の目的もなく過ごし、すべての責任から逃れて生きるようになります。そして無力感に支配されてしまうのです。

 

また、コンプレックストラウマなどの原因にも、この実存的欲求不満が多く関わっているとされています。

 

1-2.マズローの欲求5段階説

アメリカの心理学者アブラハム・マズロー(1908~1970)は、人間の基本的欲求を4つに分け、1つの欲求が満たされるとさらに上位の欲求(成長欲求)が生まれるとしました。

 

基本的欲求の1番目が生理的欲求です。飢えを満たすための「食べる」、のどの渇きを満たすための「飲む」、その他に「排泄する」など生きるために最低限必要となる欲求です。

 

2番目が身の安全と生活の安定を確保するための安全欲求です。

わたしたちは太古の昔から、自分の身を案ずることなくリラックスできて安心して眠ることのできる空間を求めているのです。

 

3番目が親和欲求で、自分が所属する集団に受け入れてもらいたい、愛する人が欲しいなどの欲求です。

 

最後が他人から認められたい、尊敬されたいと願う自尊欲求です。

これら4つの欲求は、1つずつ満たされるごとに階層的に次の欲求へと進みます。また、1つの欲求をクリアするごとに人は成長していきます。

 

例えば、衣食が満たされれば安定して住める家を求め、それができれば次には良い仕事がしたい、結婚して幸せな家庭をつくりたいと欲求し、最終的には人から尊敬される人間になりたいと思うようになります。

 

基本的欲求のすべてが満たされると、さらに上位の欲求である成長欲求(自己実現欲求)へと進み、自分の能力を最大限に発揮し、自己の可能性を高めたいと願うようになります。この欲求に従って行動できるようになると、人生に手応えを感じることができるようになるといいます。

 

2.欲求不満とフラストレーション

人生においては、思い通りに事が運ばないこともあります。そのようなときに、欲求を持つ人の心には、どのような現象が起こっているのでしょうか。ここでは4つにわけて解説していきます。

 

2-1.欲求阻止状況

心理学では欲求があってそれが満たされないことを、欲求阻止状況と言います。

 

例えば、自分が将来やりたいことがあるのに、親から勉強しろと言い続けられる場合(欲求阻止状況)、自分の夢の実現が叶えられないことに不満を持つことからフラストレーションが起きます。

 

フラストレーションは欲求阻止状況と欲求不満が同時に起こっていることをいいます。

 

2-2.フラストレーション耐性

このフラストレーションに耐えるための力をフラストレーション耐性といい、この力を持てるようになることが強く生きるためには必要です。

 

夫婦喧嘩などにはフラストレーション耐性を高める効果があると考えられています。

喧嘩をして日頃のうっぷんを晴らすことによって、気持ちに風穴を空けることになり、ストレス解消になるのです。

 

あまりにフラストレーションが溜まると、そのストレスから防衛機制などの問題行動を引き起こしてしまいます。

 

2-3.防衛機制

防衛機制とは、不安や罪悪感、恥などの不快な感情の気持ちや体験を弱めたり、避けることで心理状態を安定させる作用をいいます。

防衛機制自体は誰にでも現れる正常な心理作用で、通常は無意識のうちに発生します。防衛機制には以下のようなものがあります。

 

反動形成  自分の気持ちとは反対の行動をとること。気が弱い人が強がりを言うなど。

 

置き換え  憎しみ、愛情など抑圧された感情を、別の正しいと認められた目標や行動に置き換える。兄弟からいじめられている子供が、学校でいじめっ子になるなど。

 

合理化(正当化)  できなかったことを理由を付けて正当化し、納得させようとすること。振られた人が、相手の粗探しをするなど。

 

退行  前の発達段階に戻ること。欲求不満が長く続くと、赤ちゃん言葉を使い、現実逃避をする。

 

逃避  空想または病気によって現実から逃れようとすること。

 

昇華  コンプレックスをスポーツや芸術などで解消すること。性的衝動や攻撃衝動などを社会的に有用な活動に転化する。

 

2-4.コンフリクト(葛藤)

コンフリクト(葛藤)とは2つ以上の欲求が同時に存在し、どちらの欲求を充足させるか迷う現象のことをいいます。

 

アメリカの心理学者クルト・レヴィン(1890~1947)は、コンフリクトを以下の3つの型に分類しました。

 

接近―近接型  2つのやりたいことがあって、どちらにしようか迷うような状況で生じる葛藤。(好みの2人の異性の間で迷うなど)

 

回避ー回避型   2つの避けたいことがあって、どちらかを選ばなくてはならないな状況で生じる葛藤。(好みではない2人の異性の間で迷うなど)

 

接近ー回避型  ある1つの事柄にメリットとデメリットがあるような場合、どちらを選択すべきか迷うような状況で生じる葛藤。(好みではないが、資産家の娘や息子であるなど)

 

 

まとめ

いかがだったでしょうか?欲求や欲求不満によって生じるストレスなどについて詳しく解説してきました。

これらのことを理解し、皆さんのストレスケアと人間性の成長に繋げていただければ幸いです。

 

 

【記憶に関する心理学】100冊読んだわたしが厳選した5つをわかりやすく解説

「記憶力が低いせいで仕事や勉強がうまくいかない」「どうすれば記憶力を高めることができるの?」「そもそも記憶とはどのようなメカニズムなのか?」

このような悩みや疑問を持っている方は多いと思います。

この記事では記憶力に関する心理学を、心理学に関する書籍を100冊以上読んだわたしが厳選したものを5つ紹介していきたいと思います。

1.感動を伴った経験が記憶力を高める

記憶が行われるとき、脳の中でなにが起きているのか?目や耳を通して入ってくる外界の刺激(情報)は神経細胞をつなげる役目をするシナプスを伝って大脳皮質の後頭野へと伝わり、大脳辺縁系にある海馬(かいば)に運ばれ記憶されます。

一方、喜怒哀楽などの感情や本能に関わる情報は大脳辺縁系視床下部(ししょうかぶ)にて感知されますが、その情報は大脳皮質を経由することなく直接海馬まで到達することが分かっています。そして、大脳皮質を経由する記憶よりも強烈な記憶として残るとされています。

 

なので記憶力を高めるには感動を伴った体験をすることが重要になります。

例えば、つまらない学校の授業などでも、密かに思いを寄せていた先生に教わった科目は多少でも楽しかったのではないでしょうか?そして他の科目よりも記憶している内容が多いはずです。これは勉強という「情報」に、好きな先生を前にしてドキドキするという「感情」がプラスされて、結果として記憶の定着が高まるという効果です。

 

 

2.すぐに忘れる記憶と思い出に残る記憶の違い(認知記憶と運動記憶)

記憶を大まかに分けると認知記憶運動記憶があります。

視覚や聴覚で情報を認知するとほんの一瞬だけ記憶として蓄積されます。このような超短期記憶を感覚記憶と言い、視覚からの情報は1秒程度、聴覚からの情報は数秒で消滅します。

 

次に、大脳辺縁系から海馬へと記憶が移って蓄積されている状態を短期記憶と言います。これは1分程度で消滅します。

 

海馬で1時記憶されているものを中期記憶と言い、1時間~1か月程度保存され、この期間に長期記憶するものと消滅させるものを選別します。そして重要な記憶と選別されたものは海馬から大脳へと移動し、長期記憶となります。

しかし、長期記憶も記憶されている間に1か月以内に2回以上反復することで長期記憶になるといいます。これをリハーサル効果といいます。

つまり仕事でも勉強でも長期記憶させるためには反復練習が必要なのです。

 

長期記憶は言葉で記憶する宣言的記憶と動作によって記憶される手続き記憶に分けられ、さらに宣言的記憶は特別な出来事として記憶されるエピソード記憶、知識を記憶する意味記憶に、手続き記憶は、すでにある記憶に新しい記憶が影響を受けるライミング記憶、ある技術のノウハウである技能、条件反射として記憶されている古典的条づけなどに分かれます。

 

 

3.人は記憶すると同時に忘れてしまう

人の脳には記憶するメカニズムがありますが、忘れるメカニズムもあります。

長期記記憶や中期記憶は一時的には記憶しますが、必要ないものとして消滅します。

消滅する原因としては、興味がないテーマだったり、記憶しにくい内容、集中できない、似通ったものと混同する、緊張や興奮で思い出すことを妨害されるなどがあります。

 

長期記憶として残されているはずなのに、思い出そうとしても思い出せないことがあります。いわゆるド忘れです。ド忘れはなにかのきっかけで思い出すことがありますが、どんな手掛かりを与えても思い出せないことがあります。これが記憶障害で過去に覚えていたことを思い出せない長期記憶障害と新しいことが覚えられない短期記憶障害があります。

記憶障害のうち、宣言的記憶が障害された状態を健忘といいます。エピソード記憶意味記憶が失われるもので、物忘れから記憶喪失まで含まれます。

 

特に認知症ではこの健忘が初期症状から見られます。アルツハイマーでは一時記憶する働きがある海馬から脳萎縮が始まることから、物忘れが多くなるといわれています。

 

年をとると物忘れが多くなってきます。確かに脳細胞は年とともに減少し、増えることはありません。しかし、脳細胞を繋ぐネットワークは年をとっても増やすことができます。新しい刺激を脳に送ることで、細胞同士の連絡網の発達を促していきましょう。

 

 

4.運動記憶を高めると運動能力が上がる

運動が得意になるための決め手となるのが記憶力です。この記憶力はものを覚えるための認知記憶とは違い、運動記憶と呼ばれ、記憶中枢である海馬とは無関係な記憶のことをいいます。

 

野球、サッカー、ゴルフなど、あらゆるスポーツで傑出した選手がいますが、彼らがなぜ上達するのかと言えば、繰り返し練習しているからです。過酷な練習メニューも運動記憶の仕組みを知ると、その効果に納得できるはずです。

 

運動記憶では、大脳皮質から神経回路を伝わって小脳皮質へ電気信号が送られることで、運動のやり方に関する指令が筋肉へ出されます。

しかし、指令を受けた筋肉は最初からうまく働くことはありません。野球で言えば飛んできたボールをキャッチできなかったり、ピッチャーが投げたボールを空振りしたりします。このとき小脳からは、間違った運動指令が出されているために失敗が起こっているのです。すると、再び大脳から小脳に「この動きは失敗だ」という信号が送られ、間違った運動指令が抑圧されます。

 

この一連の脳の動きをフィードバックといい、フィードバックを繰り返すうち、次第に小脳に正しい運動を行うための指令を出す電気信号が強化され、運動能力が向上していくのです。

 

なので運動が得意になるためには、何度も失敗することによって少しづつ正しい感覚を身体になじませていくことが大切です。これはスポーツに限らず、演奏、演技など体を使って何かを行うことにはすべてに共通することです。

 

 

5.記憶力はどこまで高められるのか

人間の記憶力には差があるといわれていますが、本来人間の脳が持つ記憶の容量は膨大なものです。ハンガリーの数学者でコンピューターを発明したジョン・フォン・ノイマンは、その量を10の20乗ビット程度と試算しました。

ビットとは、コンピューターで使われるデータの最小単位であり、8ビット=1バイトに相当します。1バイトはアルファベット1文字分ほどのデータ量です。また、パソコン1台が持つハードディスクのメモリで考えてみると、最近の標準的なハードディスクの容量は100ギガバイトであり、これをビットに換算すると約8600億ビットになります。ノイマンが試算した10の20乗ビットはこれをはるかに上回る量になり、100ギガバイト容量を持つパソコン台数でいうと約1億台分に相当します。

 

この説に対し、人間がものを忘れる機能を差し引くと記憶容量はもっと少ないはずだとする説もありますが、いずれにしても人間の脳の記憶容量はとてつもなく大きいといえます。

 

さて、人間の脳が記憶を行うときの構造を表したものに記憶ネットワークというものがあります。

ある概念が記憶されるとき、関連し合う者同士が網の目のように結ばれていきますが、より関連性の大きいもの同士が近接することがわかっています。このように関連性のあるもの同士が近接しながら情報が整理されていくことをライミング効果といいます。

 

このプライミング効果を利用することで記憶力をアップさせるなど、近年記憶力開発の方法が研究されています。

 

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

記憶力に関する心理学でわたしが特に重要だと思うものを5つ紹介しました。

この5つを理解し、強化していくことで、皆さんの記憶力が向上し、仕事や勉強などで良いパフォーマンスを発揮していただければ幸いです。